東京地方裁判所 昭和42年(借チ)1044号 決定
〔主文〕申立人が相手方に対し金一五万円を支払うことを条件として、本件改築を許可する。
本件借地契約の賃料は、本裁判確定の月の翌月から、三・三平方米につき一ケ月金五〇円と定める。
〔決定理由〕三 ……本件借地契約については増改築制限の特約は不明であるが、従前の経緯に照らし申立てを適法と認めるべく、また、本件申立てを不当とするに足る特段の事情が認められないから、本件申立てを認容するのを相当とする。
四 そこで、附随の裁判の要否及びその内容を検討する。
1 鑑定委員会の意見は、本件土地の価格は三・三平方米当り一五万円を相当とすべく、申立人が既に老朽化した建物をとりこわし、共同住宅兼申立人の居宅を建築することによつて経済的利益が増大することを考慮した上で、申立人に対し借地のうち、申立人が現に占有使用している一五七・一二平方米について三・三平方米当り一万五千円の支払を命ずるのが相当であり、賃料については三・三平方米当り一ケ月金五〇円が相当である、としている。
2 ところで、本件改築を許可することによつて受ける相手方の不利益は、借地法第七条による異議を述べ得ないことになるということにつきるものと解せられる。すなわち、申立人が承諾又は許可なくして本件改築を実施し、相手方がこれに対して異議を述べれば、本件建物が朽廃すべかりしとき又は期間満了の時(約一五年後)に借地権が消滅するにも拘らず、許可を得て改築をすれば、存続期間は今後二〇年間となる、ということである。しかし、本件建物が朽廃するであろうときを現在予測することは困難であり、仮りに相当の修繕を加えていけば、今後かなり長期にわたり使用できるものといわざるを得ない。従つて、現段階において明確にいえることは、存続期間が一五年から二〇年に延長になるという点と仮りにその期間満了の際に、更新されないで借地契約が終了することになれば、申立人の請求により相手方の買取るべき建物が改築された建物になるという点である。
なお、本件改築で共同住宅を建築することによつて受ける申立人の経済的利益の点は、増改築の制限や建物の使用目的に関する制限の特約の存否不明の本件契約関係のもとでは、考慮する必要がないものと考える。
そこで、当裁判所は前記認定の事実関係及び鑑定委員会の意見を参考として、申立人に対し相手方に、本件借地のうち申立人が現に占有使用している一五七・一二平方米について三・三平方米あたり金三千円(本件土地の価格の二%)合計金一五万円(端数切上げ)の支払いをさせるのが相当であると認める。
賃料については鑑定委員会の意見に従がい、三・三平方米あたり一ケ月金五〇円と定めることとする。<略>(西村宏一)